16 NHSのCBTワークショップ

不安症の個人セッション2回目

不安症の個人セッション1回目」で立てた計画通り、一週間後の2回目では私の「行動・活動」についてセラピストと見ていった。

ここで登場したのが、「Activity Diary」という以下のワークシート。これは一週間の日々の中で、なにをしているか、そしてそれぞれの活動について、

S値(Satisfaction=満足度)
A値(Achievement=達成感)

を10段階で評価してみる、というものだった。
activity diary
①まずは一週間書き込んでみて、バランスがどうなっているか見てみる。②そして次に、どういう値が足りないか、そしてその足りない部分を、夜や週末など自分の自由に使える時間でどうやって補っていくか考える。

たとえば上の例のように、「仕事」のA値が「5」だったとすると、残りの「5」をどうするか考える。では土曜日に家の掃除をして、疲れはするけれどここで達成感をとれるようにしましょう、その分日曜日はゆっくり休みましょう、というようにだ。

試しにその週にあったできごとを書き込んで、値をつけてみるように言われた。ここでさっそく問題が出た。私は値をつけられなかったのだ。月曜日から金曜日まで午前と午後は仕事をしていたのだけれど、日々どうだったかと聞かれると考えこんでしまい、値をつけられなかった。

では仕事そのものについて、好きかどうか、どう思うかと聞かれても、明確な答えが出てこなかった。どうしてか説明してみるように言われたので、やっと以下のようなことを言った。

「仕事自体は、大半の作業は好きなことだし、やりがいも感じる。でも給料が激安なのと、周りから正当に評価されていないと感じている。それでも周りからよくできたと感心されたときは満足だけれど、なにか馬鹿にされたように感じたときはもう嫌になってしまう。」

お気づきだろうか。ここでセラピストに言われたことだけれど、私は「周りの評価」によって自分の満足度と達成感が決まっていた。周りからどう思われるかが、自分の気持ちの基準になっていたのだ。

満足度や達成感は、自分の気持ちのことだ。それが人によって決まっている。「自分の気持ちの把握」でも出てきた問題だったけれど、またこうして出てきてびっくりした。当時の会社で日本的なところがどうのこうのと思っていたけれど、もしかしたら自分がちゃんとした人間だったらなんの問題もなく続けていられたのかもしれないと、ここで初めて思った。

日本では、それでも問題がなかった。日本では自分の気持ちを言わなければいけない場面がなかなかない。でもイギリスでは常日ごろから自分の気持ちを伝える場面があり、そのたびに私は回答がわからずまってしまっていた。

たとえば、どこかにお邪魔した際に「なにか飲みますか?」と聞かれたとき。日本だったら考えなくても「お構いなく」で済む。でもこちらでは、なにが飲みたいか答えてあげないほうが不親切になってしまう。なのでみんなすぐに回答を出せるものだから、最初は本当に驚いた。水がいい、お茶がいい、コーヒーに砂糖二つミルクはなし、紅茶にミルクだけで砂糖なし、など。

普通の人なら、それでも慣れれば回答を出せるようになるのかもしれない。けれど私の場合は、とにかく自分の気持ちがわからない、ほしいものがわからなかった。食べたいものならなんとなくわかるけれど、でもレストランで注文するときは「この場でしか食べられないもの」「値段の安いもの」を頼もうとすることが多くて、考えてみたら本当に食べたいものを頼んでいなかった。

たとえば、ステーキが食べたいけれど、値段が高いからやっぱり他のものを食べなければならない。でもそんなに食べたいものはない、だからどうしたらいいのかわからない。じゃあやっぱりステーキかなと思っても、でも高いなと一度思うとなんだか食べたくなくなってきたりもして、全然決まらずに延々メニューとにらめっこすることになる。

要するに、私は「気持ち」と「」がつながっていないようだった。

これをつなげるにはどうしたらいいと思うかと聞かれたけれど、そんなのまったくわからなかった。「もっと自分の気持ちにフォーカスするべきなのかな」と答えれば、「フォーカス」というのは頭でやることで、「気持ち」は自然にわき起こるものだから、フォーカスして感じるものではないと言われた。

私は、本当に自分の気持ちがわからないのだった。

セラピストは、気持ちと頭をつなげるには「ヨガ」がいいかもしれないと言ってきた。最初なにを言ってるのかわからなくて固まった。こんな西洋の病院の白人イギリス人のセラピストから、「ヨガ」の二文字が出てくるなんて思いもよらなかった。正確には「Yoga」の四文字だけれど。まさに青天の霹靂だった。

これが、私とヨガの出会いだった。

セラピストいわく、ヨガは体の「運動」でもあるけれど、頭と心をつなぐ「メディテーション(瞑想)」でもあるのだということだった。またこの「瞑想」という単語に驚いた。こんな西洋の(以下同文)。

理由はよくわからなかったけれど、とにかくなんでもやってみようと思った。もう自分の知っている範囲内のことではできることがない。だったら新しいことをやっていかなければならないのは自明だ。そこにせっかく専門家が勧めてくれたものがあるのだから、やってみなければと思った。

広告

不安になってしまったら

ワークショップの最後に、まず不安になってしまったらどうしたらいいかを教わった。勉強したひとつひとつの対策や手段をどこでどんなときに使うかや、全体としてどういう流れでなにをするというのをちゃんと教えてもらえた。

1)Worry Tree(不安のツリー)

不安を感じたときにどうしたらいいかのチャート。裾広がりの形が木に似ているので、このネーミングになっている。行動プランを立てたり不安を手放したりする部分は、習った具体的な手法を使う。
worry tree

2)The Helicopter View(ヘリコプタービューのワークシート)

ストレスフルな状況では、感情に取り込まれてしまいやすい。するとものごとを曲がった見かたで見てしまう。このワークシートを使って、違う視点から状況を見れるようにする。要はヘリポートから飛び立つように、状況から離れて上のほうから全体像を見るようにするということだ。helicopter view

3)STOPP Worksheet(STOPPワークシート)

上記の「ヘリコプタービュー」に入っている「STOPP」部分に入るもの。不安症だけでなく、他のいろいろな問題にも使えると思う。STOPP

4)対策チャート

最後に、なにかあったときにどうしたらいいかを具体的にまとめたチャート。「Worry Tree」の詳細版。chart

2時間のセミナーで、かなり具体的なことがたくさん勉強できた。他に問題のない本当に純粋な不安症の場合なら、これだけでもかなり充分だと思う。私の場合はこれでも解決できないことが多くて、このあとに個人セミナーへ行くことになった。

不安症の再発防止

3.Behaviours(行動)の対応策

12)Relapse Prevention(再発防止)

不安感の上昇に気づくことは、そのあとに来るもっと大きな問題を予防する鍵となる。以下の二つを含め、いろいろな方法が取れるとのこと。

①定期的に気分や不安感をモニターしてみる
問題というものは、気づく前にすでに持ち上がってしまっていることが多い。毎週、または毎月、不安感を0〜10で点数付けしてみることによって、大きな問題になる前に気づけるようにする。

②前兆やトリガーを確認しておく
危険が起こる前兆や不安感のトリガーを確認しておいてすぐ気づけるようにしておくのは、とても有効。以下のような表を作成して確認しておくといい。また、もっとも高リスクな状況三つ程度とその対策をまとめておくのもいい。

Warning Signs and Action Plan(不安症の前兆と行動プラン)signs and planshigh risk situations「気づき」というのは一番大事だと思う。気づいたらできることでも、気づかなかったらもちろんできない。一番難しいのは「自分には問題がある」という最初の気づきだけど、これさえできればその後もいろいろなことに気づいてラクになっていけると思う。

私の気づき」でも書いたけれど、私も最初の気づきは本当に大変だった。ずっと親が悪いと思ってきたから、まさか自分に問題があるなんて思いもしなかった。まずは親が悪いと気づくこと、そして自分の中にも問題が染みこんでしまっているということ。特に後者に気づくことは本当に難しいけど、なにか生きづらさを感じていたらスルーせずに見つめていってほしいと思う。

人間は本来、なんの心配も問題もなく完全に自由に生きられる。自由でないとしたら、そこにはなにか解決できる問題があるということだ。