父親の問題が母親に影響していた

ところがその同僚のおばさんだけかと思いきや、そうではなかったのだ。

久しぶりに実家に行くと、「もうお父さんと一緒に寝てないんだよ」と母親が言うのでなにかと思えば、父親が今度はバードウォッチングにはまっていて、たびたび車中泊で出かけていくのだという話だった。その際にクッションやコップなどを二人分持って行くのだと。それに対し父親は、「そんなことねえよ…」とゴニョゴニョと小さい声で反論していた。

あんなにいつも自分が正しく優秀だという顔をして、人を見下して威張りくさっていた父親は、浮気をしていた。どの面下げてだ、と心底思う。

母親は、それを追求したのかどうかはわからない。でも離婚することはなかった。それを見過ごして、一緒に生活していくという道を選んだのだ。

私が思うに、父親はたぶんそのおばさんのほうが好きだったのだと思う。経理という「賢い」仕事をしていて、学校も出ていて、話もあって、仕事で頼りにもなり、都会風の人だった。息子たちもいい大学を出て、設計士など賢い仕事をしていた。それをなぜか、父親は誇らしげに話していたりもした。

きっと彼女といると、知的な話をしたり、大人のつき合いができたのだろう。

でも、彼女と一緒にいるには、自分でお茶もいれたりと、対等でいなければならなかった。紳士を演じていなければならなかった。私にはわかる。あの男には、それを年中することなどできない。

うちの母親のように、学もなく、自分を持ち上げてくれて、妻らしく夫にいろいろやってあげることで自分を満たしているような、自分からなんでもやってくれるような女がよかったのだ。ラクだったのだ。でもそれではやはり物足りない、だから浮気をしたのだろう。

父親の完全なる弱さが、ここでようやくつかめてきた。

そしてこれによって安心感を失った母親は、愛情飢餓で自分の幸せを追い求めることに精一杯になり、子供のことをきちんと見てやれなくなっていったのではないか。ちょうど「夫の母親」のように。

それまでは「妻」として、妻らしいことをして夫に尽くすことが、母親の幸せだった。でもそれが崩れてきたとなっては、「妻」としての幸せを築けない。するとそこから「母」として幸せを築こうと、「夫」から「子供」へ依存先をシフトチェンジせざるを得なくなったということも考えられる。私がいい成績をとり、大学へ行き、「成功」することが、母親のすべてになってしまったのだとも。

一番よくわかるのが、についての話だ。

結婚して三年目くらいだろうか。「子供を作れ」とうるさく言ってくるので、「もし私が子供ができない体だったらどうするのだ(だからそういうことをむやみやたらに言うべきではない)」と言い返したことがあった。すると母親は、「それでも頑張るんだよ!私だってやったんだよ!」と耳を疑うことを言ってきた。

驚愕した。それまでは、ここまで馬鹿なことを言う人間ではなかったのだ。両親も妹も、常に自分がどれだけ思いやりがあり清く正しい人間かを主張してくるクズであって、こんなに自分勝手でまったく正当性のないことを言うようなクズではなかった。毒はどんどん悪化していたのだ。

このとき、はっきりと認識した。

こいつは自分の娘がどれだけつらい思いをしようがどうでもよく、自分さえ幸せならいいのだ、と。

それまでは、馬鹿な女だけれども、親として頑張ってみたこともあったのだろうと思っていた。でももうそんなことは微塵も思わなくなった。自分の幸せのために、自分の娘を踏みにじるような女。100%の悪魔だと、認識した。

自分で自分を満たし、幸せを味わうことができない。だから孫を産ませようとする。「親と自分の境界線」で書いたように、子供の成功を自分のものとする。子供がいい学校に行ったことを自慢する。いい会社に行ったことを自慢する。しかも夫に浮気されたとなっては、本当に子供しか自分を埋めてくれるものがない。

そう考えると、すべての辻褄があってくる。

父親の問題がどこからきているかというのは、またのちにとんでもない話が出てきて理解が進むことになる。このときわかっていたことは、18歳のときに実母がなくなっているのが、もしかしたら関係しているのかもしれないということだった。

そして、こういう家庭の問題がにどう影響しているのか。

カウンセラーは、たぶんもっとつらくて悲しい記憶があるのではないかと言っていた。私が父親を気持ち悪いと思うのは「自分のことばかり」という怒りがあるわけだけれど、そう思うに至った「自分がないがしろにされている」という出来事があるのではないかと。そして「夫の記憶の扉が開いた」で書いたように、記憶を閉じ込めているのではないかと。だから、親にかける言葉がなく、「馬鹿で哀れ」と見下していることしかできないために、「手紙を書く宿題」ができないのではないかと。

なのであればその記憶を思い出したいと思ったが、いかんせん私には年上の兄姉もおらず、叔父や叔母も「叔母と絶縁」や「相変わらずの毒一族」で書いた通りひどい様子だったので、話を聞くことはできなかった。

ヒプノセラピーの「退行催眠」にまた挑戦してみようかと言うと、カウンセラーは「あまりお勧めしない」と言ってきた。これをやったところ実父に性的虐待を受けていた記憶が突如蘇ってしまい、死ぬようなパニックに襲われて大変だった人がいるとのこと。なのでそうやって急に思い出さずに、「エネルギーセンター」で書いたようなヨガニードラをやりながら、ゆっくり思い出すのが一番だと言われた。

あとでわかったことだけれど、このときカウンセラーは私が父親から性的虐待を受けたのではないかと疑っていた。今も記憶にはないけれど、100%まったくなにもなかったと言うことはできない。確かに子供のころから、私は父親が気持ち悪いと思っていた。のちに別の記憶が関係しているのかもしれないとわかることなのだけれど、もしかしたらなにかあったのかもしれない。

カウンセラーは、どれだけ小さい赤ちゃんでも、親が自分を見ていてくれているかどうかというのは全部わかっているのだと言っていた。子供が親の目を見たとき、親がきちんと見返してくれることが、健康的なメンタルの成長につながると。安全基地」の構築ということだろう。

ただ、母親から聞いた話だけれど、父親は自分の好きなときだけ好きに子供をかわいがり、おむつなど替えたこともなかったそうだ。これだけでも、私の中に「父親にないがしろにされてきた」という感覚があって当然だった。

私がこのカウンセリングを始めた当初から、「自分が空っぽで生きている感じがしない」と言っていたことも、実家がただ家を回しているだけの演劇のような「家族ごっこ」だと感じていたことも、もしかしたらここにあったのかもしれない。

外で恋愛をしていて、家にはただお金を持って帰ってくる「父親」
浮気を無視して、ただ家庭を運営しているだけの「母親」
それにただ乗っかっているだけの「妹」

全員、本体はのところにあって、時間がくると舞台の上にあがり、劇をし、またバラバラに帰っていく。そんなお芝居のような、中身のない家族。そんな家だったのだ。

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2件のコメント

  1. はじめまして。
    自分の生きづらさを感じ、色々調べていたらこちらへたどり着きました。
    以来、拝読しております。

    私の母は本当は結婚したい相手が居たのに、お見合いで父と結婚したと言っていました。
    子供の私に嫉妬したり、家の中で孤立している感覚に耐えきれず出て行こうとした事が何度もあるそうです。
    父は私が小学生の頃に浮気で蒸発しました。(後に家に戻って来ますが)
    父が出て行った時の記憶はまるでビデオテープを継ぎ接ぎしたかのごとく抜け落ちています。
    (恐らく)それを境に、大きなストレスがかかると意識はあるのにまるで魂は別の所にあるような感覚に陥る解離状態を繰り返し起こすようになりました。
    性的なアビューズもありましたので、今回の記事は自分の過去を垣間見ているかのようで、今とても驚いています。

    記憶に蓋をするほどの解離を起こしているからかカウンセリングでたびたび同じ事を聞かれます。
    私自身も無理矢理思い出そうとするのは良くないと言われていますが、夜も睡眠薬無しでは眠れないうえ、暴言を言われ続けたせいか家族と連絡を取ったりストレスを感じると聴力が大きく下がってしまう状態です。
    いつ耳が聞こえなくなるか解らない恐怖が常に胸の中を支配していて気が狂いそうなので、過去を思い出して早くなんとかしたいと気を揉んでしまいます。
    気付けば過去を無理なく思い出せるヒントがないか、藁にもすがる思いで読んでいました。

    今回の記事にてとてもシンパシーを感じましたので、つい長々と書き込んでしまいました。これからも更新を楽しみにしております。
    ロンドンの情勢が目まぐるしく揺れ動いていますが、kelokoさんが心穏やかに過ごせる事を願っております。

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    1. > sarahさん

      はじめまして。ありがとうございます。やはり似たような経験をされているかたがいるのですね。私もいろいろやってみましたが、過去は思い出すべきときに思い出せるのだと思います。そうはいっても早くよくなりたいと思って焦ってしまうのですよね。お気持ちすごくわかります。焦らず進める方法が見つかるといいですね。また、思い出さなくても回復していけるのかもしれません。私はけっきょく父親となにがあったのかはまだ思い出していませんし、解離状態も続いていますが、このときよりかなり回復しています。このあたりのところをまた記事に書いていきたいと思います。

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