Authenticに生きる

このころ、どうしたらいいのかわからないことが多かった。

人と人との境界線」を持って生きればいいのだということはわかるけれど、「境界線を持つ」ということと「自己中心的」の境目がわからなかった。周りを気にせず自分の思う通りに生きるというのはわかるけれど、だからといって人の迷惑になることをしてもいいとは思わない。究極な話でいえば、ひどい目にあわされたからといって、怒りのままに人を殺していいとは思わない。

するとカウンセラーは、「Authenticでいる」ことだと教えてくれた。

オーセンティック」と読み、単語自体は私も知っていた。でも当時の私が知っていたのは、「Authentic Chinese Restaurant(本格的中華レストラン)」というように、レストランの看板でよく見る「本格的な」「本場の」というような意味だった。なので、なぜ突然そんな言葉がカウンセリングで出てくるのかまったくわからなかった。

たとえば以前の会社でつらい思いをしていたのも、「Authentic」でなかったのだろうと。自己肯定感があればなんの問題もなかった会社だけれど、当時の私にとっては「辞めて正解」だった。なぜ私は辞めなければならなかったのか。なぜあんなにも「わけもわからず傷つく毎日」だったのか。

カウンセラーに質問されながら、順を追って考えてみた。

1)仕事がなくなったら実家に戻らなければならないという、根源的な恐怖
     ↓
2)いざというときに実家に帰らなくてもいいように、自分にとって安心できる場所にしたい
     ↓
3)人に気に入られようとする
     ↓
4)本当の自分ではない自分を演出する
     ↓
5)居心地が悪くなり、つらくなる

びっくりした。

「自分にとって安心できる居心地のいい場所にしたい」という理由からやっていたことが、実は逆に居心地を悪くするという結果になっていたのだ。

ではこのプロセスを、それぞれの段階から破ってみようと言われた。

1)仕事がなくなったら、実家に戻らなければならないという根源的な恐怖

これは常に私を支配し続けている最大の恐怖だった。これがあったからこそ、夫ともうだめだと思っても、自分をねじ曲げてまで踏みとどまったのだ。「私の気づき」の原動力だ。それほどこの恐怖は大きかった。

けれど、そんな必要が本当にあっただろうかと。あなたのように、外国で仕事を見つけられるような才能のある人が、離婚したからといって親元に戻らなければならないなどと誰が思うだろうかと。こんな人ならどこでだって生きていけるだろうと、「子供の自分と大人の自分」で言ってくれたことをまたカウンセラーが言ってくれた。

このときは、確かにそうかと思えた。たとえば、日本人の同僚などを思い浮かべてみる。彼女たちが離婚したとする。日本に帰国することはあったとしても、親元に帰ることはないだろう。立派な大人が離婚したくらいで親元に帰るというところは、確かに想像できなかった。

ということは、この恐怖感はなにか。それはまさに、大人になっていることに気づいていない、自分の中の「子供の自分」だった。自分一人では生きていけないと思っているので、親元を離れて生きていくには、とにかく周りを固める必要があると思っている。自分一人でもきちんと成立していられるんだと思えるようにしていけば、そんな必要はなくなる。

2)いざというときに実家に帰らなくてもいいように、自分にとって安心できる場所にしたい

なぜ、いざというときのためを考えて生きているのか。これも毒親の洗脳だった。中学のころに夜中に家を抜けだしたのがバレてから、「人の信頼を失うのは一瞬、取り戻すのは一生」と言われ続けた。間違いというのは一度犯したら終わり、人生に失敗は許されないのだと思わされていた。

だからいざというときに助けてもらえるように、印象を悪くしないように、失敗しないように、みんなに好かれるように、常に気を張って生きてきた。でもそんなわけはない。人生はいつだってやり直せる。そして私が失敗したとしても、また信頼してくれる人はいくらでもいる。たまたま自分の親が、そういう普通の感性を持った人間でなかっただけだ。

付け加えると、子供というのは失敗を繰り返して成長する。その失敗を繰り返す時期に失敗させてもらえなければ、その後の人生を生きていけるだけの成長を遂げることができなくなる。毒親は、普段は「お前は子供なのだから」と好きにコントロールし、都合のいいときだけこうして大人と同じに扱って「間違いは許されない」とする。このダブルスタンダードが、子供をおかしくさせる。

3)人に気に入られようとする

毒親は意見がコロコロ変わるので、なにかどうしても頼まなければならないことがある場合、用心に用心を重ねて準備をする必要がある。だから自分がなにかお願いしたいときにそれをやってもらえるよう、普段から逆にそれを相手にやってあげておく必要などがある。それが癖づいてしまっていて、会社でも人から気に入られておこうとするようになっていた。

でも実際は、世の中の人全員が毒親と同じわけではない。大多数の人は、そんな普段からよくしてあげているかどうかなど関係なく、必要なときに手を貸してくれる。特に仕事だったら、業務やチームが回るためにやらなければならないことがあるのは普通だ。

4)本当の自分ではない自分を演出する

人に気に入られるために、自分を無視して、人の都合に合わせて動いていた。でも、果たしてそれが本当にその人の都合に合っていたのか。私はそれが相手のためであり、相手の求めていることだと思ってやっていたけれど、本当にそうだろうか。

カウンセラーが言うには、

①人がどう思っているかを100%知ることは、不可能だと。なので、
②自分が演出したものが、実は相手が求めているものとは違っている可能性がある。だから、
③演出しないで自分に正直でいるほうがいいのだ、と。

人はそれぞれ違う体を持ち、違う環境に生まれ育ち、日々毎秒違う経験をして生きている。誰ひとりとしてまったく同じ人間はいない。自分ではない人間がどう感じどう考えるかは、「予想」はできたとしても「知る」ことはできない。その人の頭にケーブルでもつないで脳みそをまるっとダウンロードでもしない限り、不可能だ。

相手の都合を考えて演出すると、相手にとって「この人はこう考えるのだ」と自分を誤解されたまま定着することになる。どんどん演出し続けなければならなくなり、もちろん居心地なんてどんどん悪くなる。しまいには、自分が本当はなんなのかがわからなくなる。

だから、本当の自分を常に出していることが一番だ。それが嫌だと逃げていくような人なら、付き合わないほうがお互いのためになる。だから素の自分でいること、それが一番いい。本当の自分でいるほうが、実は自分にとって居心地のいい場所になっていくのだ。

これが、「Authenticに生きる」ということだった。つまりは本物の自分、ありのままの、真の自分で生きる。そういうことだった。

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2件のコメント

  1. またまたお邪魔します。私もこのブログを読ませて頂いた時に、何でkelokoさんのようにバリバリ働けて自立なさっている方が離婚=実家に戻るって当たり前に思っているんだろうってすごく疑問でした!
    こういう事だったんですね>< 
    私の場合は海外で専業主婦という名のひきこもりなので、離婚=実家に戻る可能性大ですよ~。
    絶対に絶対に嫌ですけどね。。。
    なので、kelokoさんのように海外でもガンガン仕事出来る人って本当に憧れますm(_ _)m

    ちなみに私の実家の家族構成は母(kelokoさんの義母みたいな人)父(kelokoさんのお母さんみたいな人)姉(父母のいいなり)なのでこのブログでかなり勉強させて頂いてます。
    3週間後に2年半ぶりの日本へ行くのですが、心が不安定になったらこのブログから勇気をもらおうと思います。
    kelokoさんもお体に気をつけて、無理せずこのブログを続けて頂けたら嬉しいです。

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  2. > 愛さん

    コメントありがとうございます。疑問に思われていたかたがいたなんて驚きです。それくらい私にとっては眼から鱗の事件でした。私の場合はただの事務なのでバリバリ働いているわけではないのですが、それにしてもイギリスでは離婚=実家という考えがあまりないのかなと思いました。日本だとまだまだ一般的な気もします。現に妹はたぶん一度実家に戻っていますし。
    愛さんの場合は父母の問題が逆とお姉さんなのですね。構図としては同じですよねきっと。年末日本に行かれるんですね!いろいろあるのかもしれませんが、おいしいもの食べてこの時期の日本を楽しんでらしてください。

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