よくできた従妹

この帰国で、従妹には本当にお世話になった。

彼女は彼女で、実の母親である私の叔母と絶縁している。一族のこともよくわかっているし、日本にいるから祖母のことなども私に教えてくれる。一族の中で唯一私の他に海外に住んだこともある人で、いろいろな話ができた。「化粧水」でも書いたように、イギリスに遊びに来てくれたこともあった。

彼女は学校で働く素晴らしい先生で、子供のことをよく見て小さなことにでも気づける人だった。すごくしっかりしていて、生徒の父母にもとても頼りにされていた。あまりわけのわかっていない私とは違い、人をよく観察している人で、一緒にいるとすごく勉強になった。

前回夫と日本に行ったときは、最後に空港まで見送りに来てくれた。従妹と別れたあと、急にさみしくなってが出てきた。実家でさんざんな目にあって、彼女がいてくれて本当によかったと思った。このときもまた空港まで来てくれたのだけれど、彼女のありがたみを感じながらずっと一緒にいたから、ぎりぎり泣かずには済んだ。

出発ゲートの前で、「じゃあこれお餞別」と言ってぽいっとくれたものを見て、言葉を失った。いろいろなことが心にしみて、打ちのめされそうになった。

私はこの帰国の中で、日本の化粧品をいくつか買っていた。イギリスでも化粧品は買えるけれど、日本のもののほうがやはり日本人の顔に合う色になっている。その中でチークも買ったのだけれど、このときは円が高かったので、別売りのケースは買わずに中身だけ買うことにした。従妹はそのケースを買っておいて、最後に渡してくれたのだった。

人づき合いって、人を思うって、こういうことなのだなと思った。

従妹よりもいくつも年上なのに、そういうのがまったくなかった自分。いろんな場面で、どうしたらいいかわからなかった自分。だから人づきあいが面倒で、なかなか濃いつき合いができなかった。

考えてみたら、がそうだった。人にあげるものは、人がなにをもらったら喜ぶかではなく、自分がなにをあげたいかであったり、自分の手持ちでどうにかしようとしたりしていた。逆にわけのわからないところで変な気を使って、相手を引かせることもあった。私はそれを見てずっと育った。なにが正しくて、どういうときにどうしたらいいのかということが、まったくわからなくなっていた。

以前の帰国時の「予期すらしていなかった大災害」のように、私が24時間起きっぱなしで疲れ果てているかどうかではなく、自分が「お節を食わせてやりたい」と思って行動することしかできない。「夕食の時間に食べずにお前を待っていたんだよ」と恩着せがましいことを言い、私がありがたくお節を食べることを期待する。

相手がどう感じるかは関係なく、自分がやりたいことをやってしまう。

そして私はそれに対してありがたがり、感謝しなければならないという考えを植えつけられていた。本当にありがたいと思うことがなくても、ありがたいと思われるシチュエーションを作られたら感謝を口にすることを身につけさせられていた。バーチャルだ。

従妹のこのお餞別をもらって、本当のプレゼントとは、本当の人付き合いとは、ということを教えられた気分だった。

でもこのときはまったく気づいていなかったのだけれど、のちのちこれがおかしな方向へ行っているとわかることになる。従妹と何年も何年も毎日のようにメールをし、話し合い、助け合ってきた私だったけれど、そのときまでまったくもってなにもわかっていなかった。なにも見えていなかった。気づかなかった。

従妹は、私の毒母の妹の娘だ。私が絶縁した毒叔母の娘だ。

そんな彼女が無事であるわけがなかった。でもそれに気づくにはまだまだ時間が必要だった。

父方の祖母に会いに行ったあと、二人で近くの温泉旅館に泊まった。ちょうど雨が雪になり、露天風呂は最高だった。久しぶりの会席料理も、本当においしかった。さぬきうどんやとんこつラーメン、便利なものがもりだくさんのドラッグストアに、スーパーのお惣菜。そんな思い出を胸に、このときは帰路についた。

このとき初めて羽田便を利用した。今までは成田便しか利用したことがなく、成田まで飛行機で12時間、そこから電車で90分という長旅に、毎回疲れ果てていた。羽田も確かに飛行機は12時間だけれど、そこからバスで30分で渋谷に出れた。びっくりした。ものすごい便利だと思った。

イギリスの自宅から空港までもバスで45分、そこからすぐフライト、そして着いてからもまたすぐバスで都心へ出れる。日本がぐっと近づいたように感じた。羽田発が朝の4時で大変だけれど、近くの温泉で休憩とシャトルバスがついたセットがあり、非常に便利だった。これなら前よりずっと大変な思いをすることなく日本へ行ける。そう思った。

でもこれを最後に、日本へは行っていない。ここで私の日本への共依存は終わったのだと思う。

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