Job Centreにて

就職活動を休止することにしたので、JSA(Job Seeker’s Allowance)の受給を申請することにした。「就職活動費」、日本で言う「雇用保険」だ。

夫いわく、申請しても面倒なことが増えるだけで、やりたくもない仕事をつかまされたりするので、申請しないほうがいいとのことだった。でも友人の中に最近申請して受給していたという人がいたので、話を聞いてみたところ、そこまで大変な手続きはなかったと言われた。調べてみたらオンラインでも申し込めて、週に70ポンドの手当てが出るとのこと。月に280ポンド出れば、カウンセリング代の足しにもなる。申し込んでみることにした。

けっきょくオンラインではできず、Job Centre(ジョブセンター、職安)に行って申請と手続きをすることになった。

担当になった女性は、会うなりすぐ「You are 5 minutes late, lady(お嬢さん、5分遅刻よ)」と言ってきた。そんなこと気にしなければいいのだけれど、また「よく思われなければならない」という自分が出てきて、相手の優越感をくすぐる対応をし始めた。

東アジア人、特に日本人は、こちらでは見た目が異常に幼いので、子供のように扱われることがある。その上私は、しっかりした服装で行かないといけないと思いスーツに近い格好で行ったので、ちょうどこちらの中高生の学生服のように見えたかもしれない。先輩風を吹かせたい人にとっては、恰好のターゲットだった。

私はこういう人たちに出会うと、よく相手を持ち上げていた。このときも大したことでもないのに「そうなんですか!」とことさら感心し、手続きのしかたや職探しの方法などを教えてもらいながらありがたがってみせた。就職活動は中止してカウンセリングに集中することにしたから、職探しはどうでもよく、ただ手当てがもらえればよかったのだけれど、仕事のない自分を下げて、仕事がある彼女を持ち上げるような言いかたをしたりした。

本当にどうしようもないことをしていた。でもそれが、私が身につけさせられたサバイバルテクニックだったのだ。実家にいたときは親を持ち上げうまく乗せて、必要なことをしてもらわなければならなかった。それでも裏をかかれることばかりだったし、少しも気が抜けなかった。いろいろな人を味方につけて、親に頼らなくても生きていけるようにしなければならなかった。親よりも自分の言ってることが正しいと人にわかってもらうために、「いい子」であること、「しっかりしている」ことを見せ続けなければならなかったのだ。

担当は喜んでいるように見えた。私の学歴が大卒であることを見ると、「あなたすごいじゃない!すぐ仕事見つかるわよ!」と楽しそうにしていた。気に入られたと思っていた。上から目線で嫌いだったけれど、我慢して気に入られていればいいのだと思った。

申請後、まだ受給できるかどうかはわからなかったけれど、とりあえず隔週でJob Centreに行って、就職活動内容を詳しく記録した書類を見せなければならなかった。どの会社のどんなポジションに応募し、担当のなんという人に連絡をとったか、返事はどうだったかなどの記録を、最低でも週に8つ、計16個記入し、それを細かくチェックされた。今までの分も含めていいとのことだったので、仕事を辞める前の夏にやった面接分から記入して持っていった。

仕事を探していたわけではないから面倒だったけれど、受給のためならしかたがなかった。少しでももらえるお金はもらっておきたかった。

ところが数回行くと、担当がなにかと理由をつけて面談をキャンセルするようになってきた。一週間引き延ばしたり、最後には「トレーニングがあって遅れるので」と別の人と予約させられた。担当が嫌でしかたがなかったから、別の人にやってもらえることになってよかったと思った。

別の人のデスクに行ってみると、担当のだった。そして待ち時間の間に担当も帰ってきた。担当がいるすぐ隣で、別の人と面談をした。その人は私の書類を見るなりすぐ、古い記録を持ち出してくるのはだめだと言ってきた。古いものも入れていいと言われたと伝えると、初回はいいけれど、その後からは面談後にやった就職活動分を書かなければだめだとのことで、その場で全部消されて、新しい記録をつけさせられた。二週間分の活動なんてもとからなんにもないから、携帯を見ながら昔の活動を引っ張り出してきて、日付けを最近のものに変えてとにかく埋めた。

私がそれをさせられている隣で、担当は見えない聞こえないふりをしていた。彼女は、もしかしたらこれが言えなかったのかもしれないと思った。あんなに先輩風を吹かせているのに、私がにこにこして埋めてきた記録に文句をつけられなかったのかもしれない。先輩風を吹かせられて気に入られてると思っていたのに、もしかしたら彼女にとって私は扱いにくい人だったのかもしれない。

上から目線だと思っていたのも、自分の思い込みだったのかもしれない。私が毒親育ちの刷り込みから勝手に上下関係を作ってしまったけれど、そんなことをする必要などなかったのかもしれない。当時はまだわかっていなかったけれど、毒親のもとでは有効だったサバイバルテクニックが、大人になってから人間関係の構築を邪魔してしまう典型的なパターンだった。

けっきょく該当年次に収入がなく雇用保険を納めていなかったことから、JSAは受給できなかった。だからJob Centreへ通うこともやめてしまったのだけれど、この担当とのことは新たな気づきをもたらした。

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