愛着障害の克服3:愛着の傷の修復つづき

「愛着の傷」の続き。

2)愛着の傷を修復する

(6)依存と自立のジレンマ

回復の過程において、その傷が深いほど、支えてくれる人に甘えようとする一方で、反抗的になったり困らせたりする現象が現れる時期があり、この時期がもっとも重要な局面となる。これには二つの段階があり、支えてくれる人の愛情を求めたいのに我慢していることや、自分を振り返ってくれないことへの怒りによるものと、もう少し成長した後の、支えてくれる人からの期待を鬱陶しく感じ、距離を取ろうとしていることによるものになる。

特に後者は、期待に背き見捨てられてしまう不安と、依存から脱して自立したいという欲求の間でジレンマを感じているため、これを乗り越えるには支える側が反抗を受け止めて認めてやることが大事。しかし支える側自身が愛着障害を抱えている場合はそれが許容できないため、修復どころか逆に傷つけてしまう。

(7)傷ついた体験を語り尽くす

安全基地を確保し、子どものころの不足を取り戻したり、周囲に受け入れられる共感的な体験プロセスと同時に、言葉を介した認知的なプロセスも必要となってくる。子どものころに傷ついた体験というのは、心の隅に押しやられて言語化されないままもやもやとした情動的記憶として心に巣食っており、これが無意識のうちに心や行動を支配し、ネガティブな反応や感情の暴走を引き起こす。まずこの記憶を再び活性化させ、そのときどんな思いだったかをその人の言葉で語らせ、膿を出す必要がある。

最初は「なんとも思ってない」といったように問題の存在を否定することもあるが、次に否定的な感情ばかりを語るようになり、傷が深ければ深いほど、傷を受けた期間が長ければ長いほど、長期間続く。これを、否定的なことを一切言わず丸ごと受け止めてくれる存在に語り尽くすことで、一つ一つの事実を再発見し、それを大きな物語として統合する作業を共に行う。

ところがこれが、安全基地とならない人がパートナーや恋人であった場合は、うつや心身症によって心も体も次第に蝕まれていくことになってしまう(=私)。漱石もお嬢さん育ちの妻が完全な安全基地とはならず、小説で表現することに逃げた。

これが主にカウンセリングでやっていることなのだと思う。カウンセラーからは、具体的にどういうことがあったのか、どういう気持ちだったのかをよく詳細に聞かれる。

(8)怒りが赦しに変わるとき

過去の傷と向かい合う段階を徹底的に進めていくと、否定的なことばかりを語り尽くした後で、楽しかった経験や親が自分のために骨を折ってくれたことをふと思い出して語ったりするようになる。そのころから次第に、親の否定的な面ばかりでなく、良かった面や愛情を受けたことにも向きあうようになり、トータルな視点で受け止められるようになる。悲しみと怒りの物語から、愛と赦し、そして希望の物語へと転化され、それを一緒に受け止めてくれる存在と共有することによって、その人を縛り付けていたものが次第に解消され、もっと現実的な力に変わっていく。

親の方も歩み寄ることができると、事態は劇的に好転し、安定化と真の自立に向かって進み始める。親と和解できた場合、不思議と自分自身とも「和解」することができ、それまで過度に否定的に考えていたのが、自分を受け入れ自信を持つことができるようになる。

この段階は私にはまだ来ていない。たまによかったことも思い出すけれど、人に話したことはない。まだまだブロックがあるのだと思う。

(9)過去との和解

愛着障害を克服する過程として、愛着対象者へのネガティブなとらわれを脱し、自己肯定感を取り戻すためにも、非常に重要な「過去との和解」という段階がある。自分を否定し、虐げていた親や自分に低い評価しか与えなかった親と、立場が逆転する場合もある。

心理学者エリクソンの場合、素晴らしい妻を持つことで父親の評価を得、父親が経済的苦境に陥った際は仕送りをし、前向きに乗り切った。方や、哲学者ショーペンハウアーの場合、絶縁状態にあった母親が作家として成功した後に経済的苦境に陥った際は、母親の懇願を拒否し、孤独な人生を送った。

カウンセラーいわく、解毒には自分の過去を「否定」するのではなく「受け入れる」ことが必要だと言われる。自分の過去を否定することは、傷ついているインナーチャイルドを否定することであり、いつまでたっても大人の自分と統合されないからだ。

(10)義父と和解したクリントン

クリントンの養父は、酒を飲んでは母親に暴力を振るう人だった。だが、親の離婚後に母親の姓にするのを拒否したことから、養父に愛着があったのかもしれない。養父が末期のガンにかかったときに見舞って、政治家になる夢を語ったところ、お前ならできると認めてもらえたことから、自信のない冴えない自分から変わったのかもしれない。

(11)スティーブ・ジョブスの場合―禅、旅、妹との邂逅

若いころのジョブスは、典型的な愛着障害の特徴があった。心の安定を求めたジョブスは、まずドラッグに溺れるが、その後に東洋哲学に惹かれ、禅の導師に通い、これが愛着障害の克服に大いに役立った。また探偵を使って探しだされたを支えと感じるようになり、これが禅の導師とともに「安全基地」となったのかもしれない。

これをきっかけに実の母親とも関わりを持つようになるが、一方で養父母のことを積極的に自分の「親」だと周りに主張するようになる。理想化した「幻の親」を克服することで、「本当の親」を再発見し、親が与えてくれたものに感謝をするというプロセスが起き、養父母の愛着を確認するとともに、自分の過去と和解ができたのだろう。

「過去の受け入れ」によって、インナーチャイルドが癒され、大人の自分との統合に向かったのだろうと思う。私はまだ自分の過去を否定したいので、この段階までは遠い。でも学位がとれたことや英語の勉強をしたことなど、少なからずの過去が否定できなくなってきたので、解毒は少しずつでも進んでいるのだと思う。

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