日本的な会社が苦手な理由

一週間の自宅療養」中に、どうしてこうも日本的な会社がだめなのかを考えていた。だめだと思ったところは、以下のようなところだ。

1)なあなあ

先日夫が会社で面接をする側のトレーニングを受けてきたのだけれど、その中で「人を採用する上で判断に使用してはならない9か条」というのを習ってきた。

①Sex(性別)
②Sexuality(性的嗜好)
③Age(年齡)
④Religion(宗教)
⑤Nationality(国籍)
⑥Race(人種)
⑦Experience(経験)
⑧Marital Status(家族構成)
⑨Disability(身体障害)

私が当時の会社の面接を受けたとき、⑧の家族構成を聞かれた。たしかに日本の会社では平気で聞かれることだと思う。女性を雇う場合、独身だったら「結婚退職のリスク」、既婚だったら「産休リスク」、そして子供がいたら「育児リスク」を考えるのが当然だからだ。

イギリスの規則を知らないはずはないけれど、相手が日本人となるとなあなあで済ませられると思っているのではないか。面接を受ける立場では、質問に答えずにいることはできなかった。それが悲しかった。

2)5時28分

就業時間が朝9時〜夕方5時半だったのだけれど、イギリス人の同僚が5時25分にパソコンを落としたら、日本人の上司に「せめて28分まで待たなきゃだめだよ」と注意されたらしい。たった3分でなにが変わるのか意味がわからないと、同僚は気持ち悪がっていた。

現地の人たちはみな終業30分前にはもうそわそわし始めてるし、イギリス人の上司たちは自分のマグを片づけ始め、そのついでに部下たちに「最近どう?」「もうすぐ引っ越しだったよね?」などと話しかけたりして、仕事をしてる人などいない。そういうコミュニケーションもとても大事だし、日本人は部下に意味のないプレッシャーを与えるだけで、無駄なことをしているのではと感じた。

3)影武者

たった3分でなにが変わるのかもはなはだ疑問だけれど、人の行動をこんなにも見張ってるということを恥ずかしいとも思わず堂々と口にしてくるところが私は怖かった。「日本の会社」でも書いたけれど、とにかくいつも見張られているように感じて息がつけなかった。

偉い人が会議に入ってしまっていたときに、他の国のオフィスの人と電話で気楽に話していたら、私のすぐ近くで日本人が聞き耳を立てていて驚愕したことがあった。その人の席は遠かったのだけれど、会議から出てきたら私があやしい電話をしていると思って、わざわざ私の近くで作業をしながら話を聞いていたのかもしれない。私の電話が終わるのを見て、また会議に入っていった。気が休まらなかった。

4)同一視

会社のためにみんなで一体となって目を光らせているのは、なにかカルト的なものを思わせた。1年で辞めた人がいたのだけれど、それに対して「でもまだ1年でしょ?」と、「1年ぐらいでこの会社のなにがわかるっていうんだよ!」という気持ちがあるようだった。まさに「1年つき合ったぐらいで俺のなにがわかるっていうんだよ!」と同じような。

これを聞いたときに、背筋がゾワッとなった。会社のことなのに、個人的にとってしまう。会社がほめられれば嬉しいし、けなされると悔しい。たしかに自分の好きなものをけなされたら気分はよくない。でも会社は単なる契約で結ばれた関係の、単なる生活に必要なお金を得るための、単なる仕事をする場所だ。それを自分のことのように思っているのが、とても怖かった。

5)パワハラ

「日本人は始業時間には厳しいけど終業時間を守らない」というのを読んだけれど、本当にうまい表現だと思う。終業時間後に現地のスタッフに仕事を頼んだりする。「え、今?!」などと言われても、「うん」とやらせてしまう。こちらでは終業時間30分前に仕事を頼んでくる人はいないし、そんなことをしたら嫌われる。

別に今でなくても明日の朝一番でもいいわけなのだけれど、翌日の朝に日本が開くときには片づけてあると自分の株も上がるのか、今日できることはやってしまってスッキリして帰りたいのか、詳しいところはわからない。その程度のこととスタッフのモチベーションを下げることの、どちらが重要かがあまりわかっていないような気がした。

6)「風邪?」

欠勤の連絡を入れると必ず理由を聞かれた。「病欠」だと言っているのに、風邪なのか、病院へは行ったのかなどと、まるで親でもあるかのような個人的な質問をされる。体調は社員それぞれが自己管理しているものであって、長期の病欠でもしない限りは会社に相談をしたり報告をしたりする義務はない。そして「自己管理」とは「絶対病気にならない」ということではない。

ぼろぼろの体」のところでも書いたけれど、イギリスでは朝具合が悪くなっても、その日のうちに医者に会えることはまずない。しかも誰も風邪くらいで医者に行ったりはしない。症状を止めたって風邪は治らないし、医者に行っても薬はもらえないからだ。風邪ならみんなゆっくり休んで治すので、すぐ復帰しなければいけないプレッシャーもない。

…というように、会社の日本的なところがどんどん目につくようになって、どんどん苦手だと思うようになっていった。もともと日本にいたときから日本的な会社ではないところで働いていたのと、渡英してからも日本の会社の名前はついているけれどほとんど中身は現地の会社というようなところで働いてきたため、ここでのカルチャーショックが大きく、苦手意識もその分大きかったのだと思う。

でもそれ以上に、胸が苦しくなるような気持ちと、上記のようなものを目にしたときの恐怖はとても大きく、これは異常だった。自分は現地採用なのだし、日本から来ている駐在の人たちと同じようなことを強いられることは絶対になかった。こちらでの常識をきちんとわかっている駐在員もいたし、現地の人にはそれなりの対応をしている人もいた。客観的に見れば、その辺りの住み分けはかなりできている環境だったと思う。

だから、「自分は日本人ではあるけれど別なのだ」と、関係ないと思っていればそれでよかったはずだ。いくら見張られていようとも、気にせず自分の思う通りに仕事をしていればよかった。でもそうスルーすることができず、自分の中に深く刺さってしまっていた。

なぜだか考えたとき、これはすべて毒親を思い起こさせるからなのだと気づいた。

1)自分のことは都合のいいように済ませ、こちらの都合は同じようには聞いてもらえない。
2)「時間」や「お金」などの物質的なものでしかものごとを推し量ることができず、非現実的。
3)なにか少しでもミスがあるとすぐ突っ込まれるために、安心していられない。
4)「家」や「親」と同一視されて、「私個人」が消される。
5)自分のために私の考えや都合を無視することは、「親孝行」などの「常識」とされる。
6)私の「自己管理」を尊重しない。

すべてが、毒親からされてきたトラウマだった。だからこんなにも痛かったのだ。

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