日本の会社

人前で話す」のところで書いた問題以外は、以前好きだった仕事と似ている業務をしていて、とても充実していた。

それでも、会社についてはしばしば疑問に思うことが多かった。

この会社は、今までに私が勤めた中でも、「」がつくほどの日本的な会社だった。日本から来ていた社員は全員新卒からずっと働いており、「社会人歴=社員歴」だった。いろいろな部署を経験させられているようだったので、やはり有望株はゼネラリストとして育てる典型的な会社なのだと思った。

あまり日本的ではない会社にしか勤めたことがなかった私は、ここでカルチャーショックを連発した。

最初は、素晴らしい会社だと思った。新しく入った私に対して、周りが一丸となって手取り足取り教えてくれて、私の仕事なのにきちんと見ていてくれた。いくつも会社を経験してきた私も、最初にその会社のやりかたを学ぶことの重要性を知っているから、これだけ細かく指導してもらえるととても助かった。

でも、新人にそこまでするということは、裏を返すと、そこまでの完璧を追い求めているということだった。

どんなに害のない単純な間違いでもなくしていくことが「全体のため」だから、まったく関係のない部署の人からでも「それ違いますよ」とミスを指摘して拾っていくことが親切で、「仕事ができる」という感じだった。

確かに、これはとてもいいことだ。ミスを出さないようにすることも大事だが、万が一ミスがあった場合、それが表に出る前に修正することができれば、ミスにはならない。どれだけ上役であろうとも、なくダメ出しをされる。この点に関しては、素晴らしい社風だと思う。

ただ、それが思わぬおかしな方向へ出てしまっていることもあった。細かいところまで完璧を求めるあまり、会社のやりかたや社内の人を知っていることが、一種のステータスとなっていた。

「前に似たようなことをやったからそれと同じようにやれば通る」だったり、「あの部署のあの人を知っているから詳しい情報がもらえる」だったり、「以前あの部署にいたから多少の無理が通せる」だったり。そうすると、勤続年数が長い人が自動的に「仕事ができる」となってしまう。どれだけ能力の高い人でも、若ければ勤続年数が短いので、長い人にはかなわない。年功序列だ。

年功序列のいいところは、年をとればとるだけ自動的に偉くなれるというところだけれど、もちろん年をとらなければ能力を認めてもらえないという悪い面がある。終身雇用の会社なら、その会社の中で知識を身につけていくことで、最終的に報われるのだろうけれど、ひとたび社外に出なければならなくなったときには確実に困る。何年もかけて身につけてきた知識が、一度外に出たらなんの役にも立たないことである可能性が高いからだ。

実際に、会社のやりかたとは違うことをしたときに、「なんでそうしたのか」という理由を聞かれ、いくら説明してもまったくわかってもらえなかったこともあった。この会社にいたことしかないから、違う考えかたがまったく理解できなくなっているようだった。

また、人の仕事を見ていてくれて必要なときに助けてくれるということは、常に人の仕事を見張っているということだった。イギリス人の社員も、駐在の人がしょっちゅう自分のパソコン画面をチェックしているとうんざりしていた。「会社のため」に、みんなで一体となって、自分以外の仕事にも目を光らせているのだ。

またこれには、「仕事の垣根がわからなくなる」という弊害も出てくる。漏れがないよう常にみんなで目を光らせ合っているため、「自分もしっかりしなければ」と思うようになると思いきや、「自分がしっかりしていなくても誰かが口を出してくれるだろう」という感覚が生まれてくる。

仕事がメールで来た場合、宛て先にたくさんの人が入りすぎているため、誰がやるのかはっきりせず、みんなが「誰かがやるだろう」と思い、放置になってしまうことがあったりした。

こういう環境で、私はどんどん落ちていった。

メールの宛て先や内容にしても、書類作成にしても、少しでも間違いや改善点があると、必ずひとこと言われる。会社をよりよくしていくために、「間違いではないものの改善できる余地がある」という程度のものでも、どんどん指摘された。もちろん、よかったことはなにも言われないので、自己肯定感の薄い私は、ただただダメ出しばかりをされているように感じてつらくなっていった。

また、周りから見張られていることで、ダメ出しをされた上に「間違えられない」というプレッシャーも上乗せされ、ますます身動きがとれないようになっていった。

普通の親育ちで自己肯定感がきちんとある人なら、この環境でも普通にやっていけるはずだ。でも、そうではない私が飛び込んでしまったことによって、ここからどんどん問題が悪化していった。

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