会社勤めに復帰

夫が仕事を辞めてから2か月、ついに私の仕事が決まった。

ロンドンの日系の会社で、1年契約の産休カバーのポジションだった。給料はぐんと安く、迷ったものの、人がよさそうなところだったのと、ひさしぶりの会社勤めだったので、安くて責任のない気楽なポジションで、復帰を始めてみるものいいかと思ったのだ。

でも、これが失敗だった。

日本の会社というものを、忘れていた。給料仕事内容が必ずしも結びついていないのが、日本の会社。「これだけしか出せませんよ」と給料を先に設定して、どんなにできる人が来てもその給料でしか雇わない。だから、どんなにできて、雇えたらとても助かるという人が来ても、希望給が高ければ雇わず、その給料の範囲内で働いてくれる人を永遠に探し続ける。

実際、非常に日本的な会社の場合、最初から「給料は動かせないみたいです」と人材会社に言われる。逆に、これを言われた場合は、ここは日本的な会社なのだなとわかる。これは、日本の本社にこの給料で承認を回していて、それを撤回したりまた承認し直すのが大変だからというのが主な理由だと思う。実用的でないシステムだなと思う。

イギリスの場合、たいていは給料設定はぼんやりとしていて、どんな人が来るかによって、大きく変えたりする。すごくできる人が来て、じゃあこれもこれもやってもらえるねとなったら、他にも仕事内容を盛り込んで、高い給料で雇ったりする。逆に、あまり経験がない人しか来なかったら、安く雇って乗り切ったり、もうひとつポジションを増やしたりもする。

融通が効くという言いかたもあるけれど、それがマネジメントなんだと思う。人材というのは、流動的だ。会社にはめるものではなく、人材に合わせて会社も変えていかなければならない。それが日本はあまりわかっていないように思う。

日本は「役職」で最初から給料が決まっているけれど、イギリスは「その人の力量」で給料が決まる印象。もちろん、「この役職ならここからこれくらい」という目安はあるけれど、「これだけできる人だからこれくらい」というのが基本だ。

だからたとえば、20万の給料で「簡単な事務」を始めて、「PCスキル」を身につける。転職するときは、「事務経験」に「PCスキル」が加わるから、25万になる。さらにもっと高度な技術を身につけると、ものによっては一気に40万にも50万にもなる。もしくは、「経験」を身につければ、それでも30万、35万、となっていく。

もちろん、都心か地方かでブレはあるものの、同じ内容の仕事はたいていどこでも同じくらいの給料だ。会社は、技能の高い人を雇いたいと思ったり、難しい仕事をお願いしようと思ったら、高い給料を出す。当たり前のことだけれど、日本はそうではなかった。

日本的な会社の場合は、会社ごとに設定がまったく異なっていて、しかも「その会社での経験」を極端に重視するから、転職してくる人はそれまでの経験が一度ゼロになってしまう印象。「どこの部署の誰を知っているから話が通せる」とか、「あの人にはこういうやりかたが好まれる」ということが重宝されるので、単に「勤続年数」がそのまま「スキル」となってしまう。これだったら、たしかに転職なんてする意味がない。

イギリスにある日本の会社の給料が安いと聞くのは、こういうことなんだろうなと思う。だから、この国での仕事の経験もあり、英語も普通にできて、PCスキルも身につけた自分が、あんな給料で始めてしまったのは失敗だった。

それは、まず①私の自己肯定感に大きな問題があった。最初に、きちんと交渉なりすればよかったのだ。でも、それをしなかった。このときは、夫も仕事を辞めて早2か月、早く収入を得ないとという焦りもあり、他の会社を見ないうちに、すぐ決めてしまったのだ。1年こっきりだから、またこのあとにいい仕事を探せばいいとも思っていた。

それから、②これだけ安い給料なら簡単で気楽な仕事だろうと、イギリス式に思ってしまっていた。渡英したての英語もできないときと同じ給料で、しかも当時よりももっと大変な仕事をすることになると知っていたら、絶対に契約しなかった。実際、この会社で働いていた日本人は全員、ここが渡英してから初めての会社という状況だった。そういう経験のない人でなければ、つかまないくらいの給料だったのだ。

でも、そんなことはすべて後からわかったことだった。

人もよかったし、楽しかったけれど、いつまで経ってもこの「安い給料で使われている」感が消えなかった。消えないどころか、どんどんどんどん大きくなっていった。

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