妹の離婚

あんなに私が結婚式に出なかったことをぎゃんぎゃん言ってたのに、妹は離婚した。今後いろいろ言われることはないだろう。結果オーライだった。親と連絡も取っていなかったし、何年もそのことを知らされていなかったので、いつ離婚したのかは今も知らない。

当時、年末に実家一泊したときに、母親がこそっとその話を始めた。「性格の不一致」だと言っていた。でも、なにが悪かったのかわからないようだった。

叔母いわく、妹は結婚してからもしょっちゅう実家に帰っていたそうだ。いつ行っても妹がいると言っていた。普通ならここで親が、「嫁に出た人間がそんなにしょっちゅう実家に来るもんじゃないよ」と諭すだろう。でもこの家くらいのレベルになると、母親が叔母の家に来て「あの子は嫁に行ったのに、しょっちゅううちに来て飯を食っていくんだよ」とさんざん自分が育てた娘の愚痴を言っていくという上級技を繰り出す。

最初はきっと、親も舞い上がっていて、帰ってくるのが嬉しかったんだろう。だから妹が調子に乗って、しょっちゅう行くようになる。すると親は飽きてきて、文句が出てくる。

でも、ここがポイント。妹本人には直接言えない。つまり、「しつけ」ができない。そこで「嫁に行ったくせにいつまでも実家に入り浸って」と「文句」になる。さらにそれを人に言うから、進化して「愚痴」になる。人の家にいって、自分のしつけがなってないことを自らバラしまくるなんて、もうハイレベルすぎて、一般人の私にはついていけない。叔母は「なんでうちに来て私に言うんだろう、自分で娘に言えばいいのに」と呆れていた。

聞いた話では、最終的に妹の旦那がボロを出したらしい。口ばかりはとてもしっかりしたことを言う人だったけど、中身は大人になっても実家から出ようとしない「子供」だったようだ。確かに、結婚式の参列をドタキャンする友達がいるような人だ。そこそこハイレベルだと思っていいだろう。

妹の旦那は深夜まで営業しているお店で働いており、毎日夜遅くまで仕事をしていたようだった。その中で、妹だけずっと家にいて子供をみてるのが気に入らず、妹に手を上げたと聞いた。

ただ、妹のことだ。どうせ手を上げられるようなことを言ったに違いない。

父親と妹は、自分たちは自然を愛す心正しい人間だと信じていて、他の人を見下して生きている。だから、言ってはいけないんじゃないだろうかということをよく言う。妹くらいのレベルになると、独身の叔父に向かって「嫁なし」とさらっと言えたりする。そりゃあ他人にそんなことを言えば、殴られて当然だろう。

母親が言うには、妹は離婚の際に、家にあった茶碗洗剤まで家財をひとつひとつすべてリストアップし、旦那ときれいに半分に分けたと。「本当にしっかりしてる子」らしい。ちゃんと自分で家庭裁判所にも行って、最後まできちんと離婚の手続きもした「しっかりした偉い子」らしい。

突っ込みどころが満載すぎて、私はピタリと止まってしまった。

自分の離婚の手続きを自分でやることの、どこがいったい「しっかりした偉い子」なんだろうか。自分の離婚を人にやってもらう人なんているのか。私なんて家裁どころか大使館に行って、渡英に関する手続きももちろん自分でしかも英語でやりましたが、そんなこと言ったら祭り上げられちゃったりするんだろうか。

しかも、茶碗や洗剤まできっちり分けるような女が、本当にしっかりしたいい奥さんだと思ってるんだろうか。そんな女がいたら、正直私は引く。妹は昔からお金にがめつく、学生のころもなにか必要にかられて出かけるたびに、1円単位まできっちり親に請求していた。大学生になってバイトを始めても必要なものはできうる限り親に請求し、挙句には就職活動に必要だからと化粧品の代金まで親に請求したらしい。

だから、離婚で家財を真っ二つにしたのはよくわかる。でも、だから離婚をするわけだ。

あの家には、この「お金」に関する異常な考えかたが根底にあった。お金を使わないのが、正しい。お金を使うのは、悪い。私は英会話学校に行ったりと、まとまったお金を使ったりもする。でも、あの家では大きなお金を使うのは「だらしがないこと」なのだ。

私は部屋も汚いし、「あるお金は全部使っちまう」らしいので、「だらしがない」。妹は、お金を使わないし、がめついから「しっかりしている」。自立もしたことがなく、(不必要な理由で)離婚もしてる妹が、「しっかりしている」で、大学卒業とともに自立し、一度も実家に戻ったこともなく、海外で親にまったく頼ることもなく生活、かつ離婚も(今のところ)してない私が、「だらしがない」。

あの家で言われてきたことがおかしいことに、改めて気づいた。

なにがなんでもお金を使わないことが、正しい。意味があるなしは関係なく、正しいことをしていなければならない。守らないと、自堕落と言われ、見下されて、人間以下の扱いをされる。

そういう家で育ち、私と違ってすっかりその考え方に洗脳されきっている妹が、ずっと実家暮らしだった若い男の子に対してどんな態度をとったのかは、明らかだった。私が夫にしていたことと、同じことをしていたのだろう。そして、その洗脳に気づかず、離婚したのだろう。普通なら諌める立場である親も、親として機能していないため、止めないどころか妹を後押ししたのだ。

衝撃だけれど、離婚の理由のひとつで、旦那が隠れてタバコを吸っていたということが挙がっていた。「子供の前で吸っていた」などではない。「家の中で吸っていた」でもない。「二度と吸わないと約束したのに隠れて吸っていた」ということだった。

「タバコを吸わないこと」は正しいことであり、「約束を守る」も正しいことだ。でも、正しいことを追求しても、人生においてなんの意味もないことは明らかだ。

タバコくらいで離婚するわけがないから、周りは「もちろんそれだけじゃないのだ」「もっといろいろあったのだ」と思い込んでいる。でも私はそうではないと思っている。あったとしても、タバコと同程度のくだらない内容の理由だろう。

気づきがあってわかったことだけど、仕事でも生活でも、人間が一緒になにかをするのに必要なことは、「正しいこと」をし続けることじゃない。お互いの考えを理解しあって、受け入れあい助けあうことだ。あの家には、それがない。

母親は、妹の離婚について「しっかりした子なのに、なんでだろうね」と言っていた。向こうの親も、「息子はだらしがないから、奥さんがしっかり締めてくれるからいいわ」と言ってたのに、と。

お金にがめつければ結婚がうまくいくと思っているところが、限りなくバーチャルだ。妹はきっと、両親のもとで行われていた通りに、妹の思う「正しいこと」を旦那に押し付け、旦那が思い通りにならないと見下していたのだろうと思う。そりゃあ手も上げられるだろうし、離婚にもなるのは当然だ。

こうして「毒親」を知ってからあの一家を見てみると、あの不可解で満たされた空間のメカニズムが理解できるようになった。

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3件のコメント

  1. 不躾に失礼します。ご家族や姉妹での関係や、お姉様から見た妹さんの性格、またご自身の価値観では、「離婚なんかすることになってしまう」んだと思いますが、私は個人的には「離婚」自体は悪では無いと思いました。「盗みなんか」とか、「暴力なんか」ならしっくりくるのですが、「離婚なんか」には私は少し違和感を感じてしまいました。まだ離婚したこともなく、もし自分が離婚してしまったら、自己嫌悪や劣等感に苛まれることも予想できます。それでも、離婚は悪い事とは思いません。選択できる選択肢のひとつです。ただ、それこそ価値観や大切にしているものの優先順位の関係で、見る人から見れば離婚なんかするから不便だしお金も無いし不幸になる、みたいに見えることはあるかもしれないですが。そういう状況でも離婚が自分にとって最良の選択肢である、という人もいると思います。
    いきなりコメントを失礼しました。記事に対する私の理解不足や認識違いだったら重ねて失礼します。
    興味深く拝見しています。

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    1. > まりなさん

      コメントありがとうございます。読み返してみました。本当にそう取れますね。直しておきます。
      私も離婚が悪いことだとはまったく思っていません。おっしゃる通り選択肢のひとつだと思います。たぶんこのときは妹と自分の話で書いていたため、こういう書きかたになったのだと思います。一般的な話をするなら別です。
      見つけてくださってありがとうございました。

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      1. こちら原因がわかりました。母親が「離婚なんか」といっていたのを引用していたようです。なので以下の意図で書いたものと思われます。

        「だから、離婚で家財を真っ二つにしたのはよくわかる。でもだから、母親の言う「離婚なんか」をするわけだ。」

        いいね

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